シュタイナー教育って何?基本のきほん

ゲーテアヌム シュタイナー教育
ドルナッハにある人智学の総本山
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 このサイトではたびたび、シュタイナー教育という言葉がでてきます。

なぜなら私自身が若い頃にシュタイナー教育に出会い、一時はシュタイナー系の学校で教師をしていたからです。

しかし、シュタイナー教育を全く知らない、あるいは聞いたことあるけどいったい、どんな教育?と言う方もいることでしょう。

そこで、この記事では、シュタイナー教育の基本の知識をお伝えします。

シュタイナー教育とは?

シュタイナー教育とは、その名の通りルドルフ・シュタイナーという人が始めた教育です。

1919年に設立された最初の学校がヴァルドルフ学校という名前だったことから、ヴァルドルフ教育とも言われています。

もともとはシュタイナーの熱心な支持者であったエミール・モルトというタバコ工場の社長が、従業員の子どもの為に教育機関を作りたい、と相談したのが始まりでした。

シュタイナーはその学校の教員になる人々に自分の思想を講義し、それを基に独特な学校が生まれ、今では世界中に広がっています。

シュタイナーってどんな人?

さて、そもそもシュタイナーって何者?と気になりますよね。

ルドルフ・シュタイナーは、1861年、オーストリアに生まれ、工科大学に進み、自然科学を専攻します。その後、ゲーテから強い影響をうけ、哲学者となり、やがてアントロポゾフィー(人智学)と呼ばれる思想の創始者となります。

メインは哲学者で「自由の哲学」という著書で有名ですが、同時に教育、芸術、医学、農業、建築にも才能を発揮しました。

 まさにレオナルド・ダ・ヴィンチのような万能の天才というわけです。

さらに、シュタイナーにはいわゆる霊感がありました。

本人はそれを公にするとアカデミックな学問の世界から追放されると考え秘密にしていましたが、ある時期から堂々と公言するようになり、恐れたとおり世間からは学者ではなく神秘主義者、とみなされるようになりました。

確かに、シュタイナーの著書を読むと、かなり難解で、今ではどうみてもスピリチュアル系と言われる分野のものが多いです。

シュタイナーが創始者となった「人智学」も、ヨーロッパの神秘主義思想である「神智学」の派生であり、シュタイナー自身は「これは宗教ではない、精神科学だ」と言っているのですが、日本人から見ると「いや、どうみても宗教でしょ」と言われても仕方ないと思います。

私も学生時代、シュタイナーハウスの「初心者向けの会」に行った時、指導者の人が「精霊」の話をした瞬間、初参加の人が突然、青ざめて立ち上がり、部屋を飛びだしていったことを覚えています。
きっと怪しいカルト宗教団体だと思ったのでしょう。

勿論、シュタイナーの思想を信じている人は宗教だとは思ってないし、シュタイナー学校は特定の思想を教え込んではいません。

しかし、シュタイナーの思想を基盤にしていることは否定できないでしょう。

シュタイナー教育の特徴

さて、どうしてちょいスピリチュアルっぽい学校が、全世界に広まったのか。

それは、シュタイナー教育の独特な特徴が、他の教育法とは一線を画し、しかもそれが非常に高い成果を上げたことによります。

有名なのは、12年間一貫教育ですね。しかも、ずっと同じ担任教師です。

シュタイナー教育はシュタイナーの人間観に基づいてカリキュラムを組んでいるので、どの時期に何を教えるかも、ほぼ決まっており、長期間で子どもをみることが重視されているのです。中高一貫教育の先駆けともいえそうです。

例えば、7歳までは文字や計算などを教えない、とか、テレビやCDをきかせないとか。
シュタイナーの理論の中に7年周期説というのがあって、人間は7年ごとに成長する部分が違うのでそれに沿った方法をとらなければならない、とされています。

また、授業自体も、日本の小学校のように教科書とノートを使うのではなく、スケッチブックのようなエポックノートにクレヨンで絵を描いたり、オイリュトミーというダンスのような動きで踊ったりと、とても芸術の要素が強い授業になります。

いわゆる早期教育の対極に位置する方法です。

知識重視の近代教育の立場からは「本当にそんなんで学力がつくの?」と疑問があったのですが、ドイツで大学入学資格試験であるアビトゥ―アの結果を調べたところ、公立学校の生徒よりシュタイナー学校の生徒が好成績であることがわかったのです。

こうして、絵を描いたり、踊ったりして一見遊んでいるようにしか見えないシュタイナー学校が、実は本当に人間の成長に即したすごい教育なのかもしれない、と徐々に世界に広がっていきました。


 しかし、シュタイナー教育の目的は学力だけではありません。知能、感情、健康な肉体をバランスよく育て、最終的に『自由な人間』を育てる全人教育を目指しているのです。

これが別名『自由への教育』といわれる所以です。

日本でのシュタイナー教育事情

日本では、早稲田大学のドイツ文学教授であった子安美知子氏がドイツ留学中、娘をシュタイナー学校に通わせた体験記「ミュンヘンの小学生」を出版し、1976年度の毎日出版文化賞を受賞しました。

それから、広く一般にもシュタイナーの名が広まり、知育偏重の公教育へのアンチテーゼとして子育て中の親たちに大きな反響を巻き起こし日本各地で「シュタイナー教育講座」が開催されるようになりました。
(先に出てきたシュタイナーハウスもその一つです)

やがて、日本初のシュタイナー学校「東京シュタイナーシューレ」が三鷹に設立されましたが、しばらくはその存在は学校と生徒をマスコミや世間から守るために一般には公開していませんでした。

私もシュタイナーハウスに何度も通ううちに、やっと学校の存在を教えてもらったほどです。

それから、京都や北海道、東京の立川、横浜などにシュタイナー学校は次々と創立され、今では(2020年時点)で8校、うち2校は学校法人として認可されています。
(6校はNPO法人)

私が創立に関わった学校もこの一つですが、今でもNPO法人なので経営は厳しいと思います。(国から補助が出ないので)

早く認可して欲しいものです。

一方、幼稚園は比較的多く、シュタイナー教育を取り入れているものを併せると50園以上あります。私の息子も近所のサークルに通わせていましたが、卒園後、シュタイナー系の小学校が急に少なくなるのが親たちの悩みでした。

シュタイナー学校の弱み

私も若い頃は日本中の公立学校がシュタイナー学校になっちゃえば日本の教育は変わる、などと思っていたこともありますが今ではそう単純にはなれません。
それにはいくつかの理由があります。

・宗教的な基盤があるので、日本ではメジャーになりにくい。

言うまでもなくシュタイナー教育は人智学が根底にあります。そして、人智学は科学的実証主義とはどうみても相いれない、神秘思想なんですね。

 なので、ときどき、シュタイナーってオカルトでしょ?と批判されることがあり、私自身は結果がよければ別にいいじゃん、と思いますが、宗教的土壌の薄い日本では公式なものにはなりにくいでしょう。

日本には、他にもモンテッソーリ学校やミッション系の学校、仏教系の学校もありますが、どの学校でも、一つで日本の教育が統一されることは考えにくいです。

・指導要領と一致しにくい

一番の問題は、文部科学省が発行する学習指導要領と、シュタイナー学校のカリキュラムがまったく一致しないということです。
学校法人として認可された2校は特例として認められていますが、それが多くの学校に適用されるかは時間がかかると思います。

 なにせ、教育目的から、方法まで、発想が全く違いますから。

・教育を受けられるのが裕福な階層に限られる

これは特にNPO法人の学校に言えるので、シュタイナー学校が全て学校法人化すれば、事情は変わるかもしれません。しかし、私が教員をしていた頃からNPO法人が経営を補助金なしで存続させるために、生徒からはかなりの授業料を頂いていました。

 なので、経済的に余裕がない家庭はいくらシュタイナー教育を受けさせたくても、公立学校しか選択肢がありません。

また、例えば私が勤務している特別支援学校は公立学校の中でも特に予算が掛けられていますので、障害がある子どもの場合、公立学校しか選択の余地はありません。

・独特の雰囲気になじめない人もいる

先ほども、少し触れましたが、シュタイナー学校は人智学の思想に基づいた教育なので、独特の雰囲気があります。
よく言えば、ナチュラルでオーガニック。悪くいうとスピリチュアル。

できるだけ人工のものを排し、幼稚園では木製のおもちゃや自然木の積み木、羊毛でできたお人形など、ふんわりとした雰囲気です。

 テレビもできるだけ見ないように、小さい頃はCDの音よりもお母さんの声で歌いましょう、と言われたりもします。

それ自体は、たしかにその通りだと私は思いますし、私自身はその世界が好きなのですが、この現代社会で、まるでアーミッシュのような生活を受け入れられる人はそう多くはありません。

よくないと思いつつも幼児にテレビを見せて、その間に家事をしたり、アンパンマンを見せておもちゃを買ってあげたり、というのが普通のことでしょう。

それを頭から否定されると「なにこれ?ついていけない世界だわ」と思うのも無理はないと思います。

まとめ シュタイナー教育を無理なくとりいれよう

私自身、生まれ変わったらシュタイナー学校に通いたいと切実に思っているシュタイナー信者(人智学徒=アントロポゾーフ)でありますが、現状、日本でシュタイナー教育が一般に広まっていくには、まだまだ時間がかかると思います。

なので、今私ができることとして、シュタイナー教育のいいところ、一般の人でも生活に取り入れられることをできるだけ紹介し、広めていこうと思っています。

シュタイナー学校でやっている授業をまるごと真似ることはできませんが、子どもへの接し方、人間発達の知識や、独特の技術はいくらでも参考になるはずです。

美術でも、フォルメン線描やにじみ絵、ねんどの授業などは実際に私が授業で使い、とても効果があったと認識しています。

公立学校の教師である私が、こうして内部から学校を変えていくのは大きな意味があると思っています。

いつか、じわじわとシュタイナー教育が広がって、やがて公立学校の研修会で若い教師にシュタイナー教育が普通に語れる日がくるといいと願っています。

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