絵心についての最初の記事です。ここでは、絵心について、一番基本的なことをお伝えしたいと思います。
絵心がない人はいない
私が二浪してようやく美大生となり、それまで我慢していた青春を満喫しようとサークル活動やバイトに明け暮れ、渋谷の街に繰り出して交友関係を広げていた頃の話です。
美大生というのが珍しかったのでしょう。初対面の人と話していると、絵やアートの話になることがほとんどでした。
そんな時、私は必ず「ところで、絵は好き?」と聞くことにしていました。
すると驚いたことに、ほぼ9割の確率で
「いえいえ、全然ダメ」「わたし、絵心ないの」「全然、アートのセンスなくて」
と否定的な答えがかえってきたのです。
美術予備校に通算4年通い、周囲は絵の得意な人ばかりだった私には軽いカルチャーショックでした。
(こんなに、みんな絵が苦手なんだ。しかもすごく辛そうに言うなあ・・・・・・)
それ以来、30年近く同じ質問をいろんな人にしてきましたが、答えは変わりません。どこでも、どの世代からも「絵心がない」という声をききました。
それに対して私はずっと、こう答え続けてきました。
「・・・あのねえ、絵心がない人なんて、いないんだよ?」
そもそも、絵心ってなんですか?
そもそも、絵心ってどういう意味ですか?絵みたいな心ですか?
それとも絵に心があるんですか?
手っ取り早くネットで辞書を調べますと、こう書いてあります。
1 絵をかく心得や趣味。また、絵を理解する能力。→「絵心がある」
2 絵をかきたい気持ち。→「絵心が動く」
一言に絵心といってもいろんな意味があるようです。
多くの場合「私に絵心はない」という人は、「絵の才能がない」あるいは「絵の技術、画力がない」といった意味で使っていると思います。
辞書で言うと、1の「心得」が一番近いのですが「理解する能力」も含まれているでしょう。
また、2の意味「描きたいきもち」は、とても重要なのですが、一般にはほとんど知られていないし、使われていません。
たとえば、ある人が「絵を描く才能」も「技術」も「理解する能力」もないし、美術館にいったこと(関心)もなくて、だから自分には「絵心がない」と思い込んでいるとします。
しかし心のどこかで「ああ、絵がうまくかけたらいいなあ…」と思っていたら。
それはちゃんと、「絵心」があるってことになりませんか?
つまり、あなたがきまり悪そうに「絵心がないんです」と言っている時点で(逆説的ですが)あなたにはちゃんと《絵を描きたい気持ち》=絵心があるのです。
本当に絵心がない人がいるとしたら、それは絵心ときいても(ズキン)としない人でしょう。
あなたが絵心をなくしたのはなぜ?
「いやいやいや、それは屁理屈で、やっぱり私には絵心なんかないんだよ。
だって、子どものころから絵が下手で、ちっとも上手くならなかったんだから。
そりゃあ、小さい頃は、お絵かきは大好きだったさ。
でも、それで絵心があるっ、ていわれてもなあ・・・・・・。
小三の時に描いた友達の顔が、あまりにも下手で、先生にも叱られてさ。
それ以来、絵を描くのが苦痛でしかたなかったよ・・・・・・」
確かに、絵が描きたい気持ちを持っていても、いわゆる画力(技術、上手さ)がないことを世間一般では「絵心がない」というのは事実です。
テレビでも「絵心がない」タレントに、へたっぴな絵を描かせて、笑いものにするという番組も人気です。
(ちょっと話はそれますが、あの手の番組では事前にお題だけ伝えて、実物や写真を見せないで描かせているので、ちょっとフェアでない気がします。プロの画家でもモチーフを見ないでかけと言われたら、かなりひどい出来になる事があるからです。)
さて、先ほどの反論の中に、重要なポイントが3つあります。
まず、幼い頃は、絵を描くのが好きだったということ。(ほとんどの子どもがそう)
次に、成長するにつれて、自分でも下手だと自覚してきたこと。
(少数のうまい子以外はそうなります)
三つ目に、これが一番重要なことですが、先生に叱られて嫌になったということ。
実はほとんどの人の絵心をなくした原因・ダントツトップは、
『美術の先生にけなされた(否定された)』
からです。
この話をすると、ほとんどの人が「私もそうでした!」と絶句します。中には、涙ぐむひともいるのです。・・・・・・知ってましたか?
あなただけではないんですよ!
どうしたら、絵心をとりもどせるのか。
これも、ひどい話ですよね。美術や図工をおしえて、才能を伸ばすべき先生が、あなたの絵心をへしおり、絵心がないコンプレックス(略してエゴコンと名付けましょうか)を植え付けた元凶だったとは。
けれど、それにはやむ負えない理由もあったりするので一概に先生だけを責めるべきではないかもしれません。
→実は先生にも絵心はない。その理由とは?
とはいえ、どんな理由があろうと、無自覚であろうと、絵心を潰され、その後の人生から芸術の楽しみを奪うことは容認できることでもありません。
ほんの少し、先生が正しい美術の指導法をしっていたら・・・下手だと落ち込んでいる子どもたちを導いて、自信をつけることができていたら・・・あなたの絵心は今も健在だったかもしれません。
・・・・・・・・でも、ご心配なく。
絵心はへし折られようが、ふみ潰されようが完全に消えることはありません。
例えるならば、小さな芸術の種が、細い芽を伸ばそうとしたら、冷たい雪が降ってきて北風が吹いてきたので、縮こまって、成長を止めたような状態です。
太陽の光で温め水をたっぷりあげて、栄養分のつまった土の中にいれば、かならず種はもう一度息を吹き返し、芽を伸ばしていきます。
いいかえれば、まず、絵心が死んでいないことを知り、環境を整え、正しい方法に従っていれば、必ず伸びるのです。
その方法は、このサイトを読んでいけば必ず身に付きます。
繰り返しますが、絵心は決して死にません。
ただ、凍り付いているだけです。
それでは、これからご一緒にあなたの絵心を解凍していきましょう!
コメント